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保険償還のシステムの本来の意義~医薬品の売上予測及び事業性評価の目的5

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医薬品の価格感受性の主体は患者及び保険者であり、特に公的保険の場合は少なくとも部分的には国である、と考えることができるでしょう。
この構造は米国でも欧州でも基本的には変わりません。

このような主体の分散が起こっている理由は、医療の福祉的側面と技術的専門性との両面から説明できます。

国民の肩代わりをするシステムと医師の処方権

すなわち前者は、医療は社会権の一部である生存権の具体的表現、日本で言えば憲法25条で示されている「健康で文化的な最低限度の生活」を、その国民の所得の程度とは関係なく保障するために、国自ら資金を調達し、もしくは国の指導のもとで資金源を確保して、国民の肩代わりをするというシステムを採用しているのです。

ここでは国が患者負担を肩代わりする一方、具体的にどのような医療行為が患者に与えられるのに相応しいのかを国が決定し、かつその価格についても国が決定します。

後者は、医学専門家としての医師が患者本人よりも患者の疾患についての情報を多く持っていると考えられるため、患者にとって最善の選択を医学的な見地から下すことのできる医師に選択の権限を委ねることは合理的です。

この医師のいわゆる処方権についての解釈が、国によって大きく異なるのです。

保険償還のシステムの本来の意義

前者は、治療手段の選択自体は医師の自由裁量に依存している、という点です。
逆に言えば、医師には治療の場面において、最善の治療を施したいという動機付けが、少なくとも自動車を購入する場合の勝者と同程度には働きません。

そこで医師に対して、包括的な視点からそのような動機を付与する社会的なシステムを、少なくとも先進国は採用しており、それが保険償還のシステムの本来の意義の一部なのです。
さらに別の言い方をすれば、社会が医師の判断に対して置いている信頼の大きさを、この保険償還のシステムが表現しているといえるでしょう。

米国や英国系の国のように、健康保険が実質的に医師の処方権をかなり制限しているような制度を採用している国では、医学専門家の自由裁量に医療行為を委ねるよりも、保険制度の経済的な動機形成によって調整された制限裁量の方が、包括的に見て最善の医療が提供できると考えられていると解釈できます。

マーケットアクセスに関する状況

一方、日本やフランスのように、医師の裁量権をかなり強く認めている国の場合には、医学専門家の善意に対する社会的な信頼度が高いと解釈できるのです。

後者のような国では、前者と比べて、たとえば後発医薬品の浸透の速度は遅くなります。
なぜなら、医師は自らの責任で最善の判断を下す必要があり、そのために必要となる情報量はより多くなるため、先発品医薬品企業からの情報提供を、後発医薬品参入後も必要とする可能性があるからです。

前者のような国では、医師は健康保険の保険者が作成したガイドラインに従って淡々と処方をすれば良いので、保険が後発医薬品を推奨すれば、直ちにほぼすべての処方が後発医薬品に切り替わります。

このようにマーケットアクセスに関する状況は国によって異なるので(そしてこの違いはいわゆる新興国市場においてはより顕著になる)グローバルな売上予測を立てる際でも、国ごとに別々の売上予測を立てることが基本となります。

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