文献調査の際の留意点~医薬品の売上予測(各論)8
- 2017.12.26
- 売上予測・事業性評価

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文献調査の際の留意点
最近では疫学論文を調査して有病者数の予測を行うサービスを提供するような業者も増えており、それは大変結構なことではあるのですが、有病率を計算している疫学論文というのは非常にトリッキーであり、業者といえどもその取扱いは苦労するようです。
その難しさは、疫学調査の限界そのものにあります。
疫学調査は普通、サンプル調査によって行います。すなわち、限られたサンプルを用いて頻度の小さい有病者の数を調べ、それを全体に拡大して有病率を推計するのです。
したがって、調査の手法によっては得られるデータの信頼度が低かったり、意図した情報とは異なるデータが与えられたりしていることがあります。
このため、業者のサービスを盲目的に頼るのではなく、自らも文献に目を通すという姿勢が大事です。
以下に、疫学論文を読む場合に注意すべき点を列記しました。
代表性
観察集団の代表性とは、観察集団が集団としてどれだけその母集団全体と「似ているか」という、その似ている程度のことです。
観察集団が偏っているようでは、偏った集団の性質が結果に強く反映されてしまいます。
実際には、その集団が母集団とすべての面で「似ている」ということを証明することは難しいので、一般的には年齢や職業などの一般属性と、その他重要だと思われるような属性(たとえばCOPD患者の有病率を調べるときの喫煙率)とが、母集団と差が無いということを示すことをもってその集団の代表性を担保しています。
逆に、たとえば特定の職業に従事している人だけに行われた健康診断のデータなどは、代表性についての考慮が必要です。
疾患定義
例えば、ある患者が糖尿病に侵されているということを示すためには、その患者が糖尿病に侵されているという基準を満たさなければなりません。
しかし、早朝空腹時血糖が126mg/dl以上の患者とHbA1cが6.5%以上の患者とでは、患者数に違いが出るでしょう。
従ってその疫学文献がどういう定義(診断方法)を使って観察対象を有病としたかということを確認する必要があります。
同時に、その定義が自分たちの意図する患者増と合致しているかどうかを確認する必要もあります。
診断患者数との違い
調査対象は患者集団ではなく、一般国民を対象にしたものでなければなりません。
患者集団を調査しても、その患者が一般国民の中にどの程度の頻度で存在するかということはわかりません。
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