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有病率モデルと罹患率モデル~医薬品の売上予測(各論)3

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いったいどの国の予測を行うのか

特にパイプラインについての売上予測は国単位で行うのが一般的であり、複数の国に関する予測を行うとしても、国ごとの予測を足し合わせる形で予測します。

したがってどのような場合に、特にどのような開発段階で、どの国を予測に含めるのかということをあらかじめ決めておき、社内で合意しておくと良いでしょう。

一般的には開発段階が進めば進むほど多くの国や地域を含める、すなわち、より粒度の高い予測を立てます。
開発段階が早く、限られた国の予測しかないときに全世界の売上を推定する場合は、便宜的に予測しない国については適当な係数を掛け合わせて世界予測にかさ上げします。

疫学モデル

疫学モデルは患者数に基づいた売上予測の方法で、複数のアサンプションを積み上げてゆくのが特徴です。

有病率モデルと罹患率モデル

アサンプションの話に入る前に、患者数についての考え方についても確認しておきたい。それはすなわち、有病者と罹患との関係についてです。
次の2つの文の違いが分かるでしょうか。

●2015年の日本の予測糖尿病有病者数は7.2百万例である(International Diabetes Federation 2015)
●2015年の日本の予測がん罹患数は982,100例である(国立がん研究センター2015)

前者は2015年のある時点で日本人全体を調べてみると、糖尿病患者は7.2万人いたと予測されることを示している。
後者は2015年の1年間において、新たにがんに侵された患者が982,100人いたと予測されることを示している。

つまり有病率はある一瞬の有病者の頻度を切り取った指標であり(これをスナップショットsnap shotと呼ぶこともある)、罹患率はある一定期間内に起こった罹患の頻度を示しています。
したがって罹患には、有病率にはない時間の次元が含まれています。

有病率に基づくモデル prevalence-based modelは、原則的に現時点での有病率が将来にわたって一定であると考えるものです。
したがってこの糖尿病の例では、糖尿病の有病者数は少なくとも予想期間中は9.1%で推移すると考えます。

一方で罹患率に基づくモデル incidence-based modelは、患者数のダイナミックな変化を再現できるモデルです。

たとえば982,100例が毎年がんに罹患するとしても、それぞれの患者がどのような転帰を辿るのかということ(この患者の転帰をペイシェント・ジャーニーと呼ぶことがある)を理解することによって、実際の薬物の需要の変化を予測することができるようなモデルです。

なぜここで二つのモデルを提示するのかと言えば、それは問題となる疾病の病態の特徴及び(売上を予測しようとしている)新薬の治療上の特徴によって、いずれかのモデルを用いた方が市場の深い理解につながり、将来にわたる予測がより緻密になると考えられるからです。

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