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医薬品の構造と立体化学~医薬品と標的生体分子の相互作用と立体化学的観点3

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共有結合

分子中の原子間には電子を介した力が働き、これを共有結合と呼んでいる。

医薬品と生体分子との相互作用の中で、共有結合に基づいた薬理活性の発現事例は多くはない。
共有結合に基づく薬理活性の発現事例として、消化管潰瘍治療薬であるプロトンポンプ阻害剤(PPI)がある。

胃壁の壁細胞には、ヒスタミンH2受容体の他に胃酸分泌に関係するムスカリン性アセチルコリンM1受容体とガストリン受容体が存在する。

胃酸分泌に関する情報伝達経路は、最終的にプロトンポンプを活性化して胃酸を分泌する。
PPIは、プロトンポンプH+-K+ATPアーゼを阻害することにより胃酸分泌を抑制する。
分子レベルの作用機構は壁細胞の分泌細管内で分子内転移反応を引き起こし、H+-K+ATPアーゼのシステインと共有結合としてS-S結合を形成することにより阻害作用発揮している。

この他の例として、医薬品の結合部位の受容体側の官能基として、例えばセリンやシステインのような官能基をアルキル化、アシル化して失活させるペニシリンの細菌細胞壁の合成阻害により抗菌活性やアスピリンのシクロオキシゲナーゼ阻害による抗炎症作用があげられる。

医薬品が受容体タンパク質と共有結合を形成すると、結合が生体中の温度やpHにより自動的に切断されることはなく、不可逆的にその働きを止めることになる。
不可逆的ではあるが実際には、酵素的な切断か受容体自身の代謝により、作用は緩やかに消失していく。

医薬品名:オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール

医薬品の構造と立体化学(コア構造との関係)

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医薬品は生体内に取り込まれ、標的とする生体分子と相互作用(結合)して所望する薬理活性を示す。
医薬品の構造の中で、標的とする生体分子と相互作用するためには構造的に不可欠な官能基などの要素がコア構造である。

コア構造は、医薬品が薬理活性を示すために必要な基本構造であり、標的になる生体分子として酵素や受容体があげられる。
医薬品が標的となる生体分子と特異的に相互作用するためには、コア構造が標的とする生体分子と電子的および立体的に相補的な関係をとる必要がある。
この関係は、鍵と鍵穴の関係に似ている。

一方、医薬品の構造の中でコア構造以外は、医薬品が薬理活性を示すための補助的な部分であり、医薬品の体内動態に関係し、薬理作用の増強や活性の維持、副作用の軽減などに影響するが、薬理活性を示すのに必須ではない。

医薬品と生体分子は、いろいろな原子間の結合力によって相互作用するが、静電結合や水素結合、疎水性相互作用などのいくつかの原子間の結合が重複して働き、総和としての分子間力が十分大きくなることが必要であり、そのために立体的な因子が重要になる。

標的とする生体分子の官能基の結合部位と医薬品の官能基の結合部位が、それぞれ立体的に適切な相補位置に収まることによって、医薬品は標的分子と特異的に結合する。

同一の標的分子に結合する医薬品は、立体的および電子的に類似した共通のコア構造を有している。

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