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サリドマイド薬害の教訓~立体異性体と生物活性の関係3

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サリドマイドの事例

サリドマイドは、ドイツでも開発された睡眠薬で、1957年に精神安定剤として発売された。

安全性が高いとされ、一般薬として取り扱われて発売され、妊婦にも投与された。欧州だけでなく日本も輸入され世界中で使用されたが、発売後、急速に奇形児の出産が増加した。

ドイツの医師がサリドマイドとの関連を疑って、国と製薬企業に警告を発したが、製品の発売が中止されたのは発売から4年後であった。
この間に発生した薬害による奇形児の出産は世界で6,000例に達した。
日本では発売中止が欧州から10ヶ月遅れ、発売中止後の製品回収も不十分であったことから、被害者数は300例に達したという。

サリドマイドの光学異性体

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サリドマイドは、不斉炭素原子を有しているキラルな薬物で、2つの光学異性体(R体とS体)が存在する。

発売時の医薬品はラセミ体であり、R体とS体を光学分割する技術や選択的に一方を合成する技術が見出されたことにより、それらを用いた研究でわかったことである。

催奇形性を示すのはS体であり、R体を開発していれば薬害に至らなかったとの議論があるが、R体を投与すると血中で一部がS体に変化している(可逆反応)ので個々の光学異性体の効果を単純に判断することができない。

現在、不斉炭素原子を有している化合物を新薬として開発する場合、代謝物を含めた光学異性体の有効性と安全性を個別に試験することが必要とされている。

サリドマイド薬害の教訓

サリドマイドは、安全性が高いとされて一般薬として容易に使えるようになったことが急速な薬害につながった。
キノホルムやクロロキンによる薬害も安易な適応症の拡大によっても当てはまる。

このような薬害を引き起こさないためには、創薬や研究開発段階で、細胞を使った催奇形性評価スクリーニングや動物を使った生殖発生毒性試験により科学的な危険性予測を積み重ねていくことが重要である。

また、倫理面の指導強化とともに市販後の安全性情報を迅速に収集・解析し、製品回収などの迅速な行政対策を強化していくことが転ばぬ先の杖となる。

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