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ファースト・イン・ヒューマン試験~臨床開発の展開と目的5

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ファースト・イン・ヒューマン試験

ファースト・イン・ヒューマン試験は、新規被験薬が世界で初めてヒトに投与される試験であり、一般に、単回投与試験がそれに該当する。
非臨床でのデータをもとに、ヒトでの安全性、有効用量、安全域を予測し、臨床試験を計画・実施する。

被験薬の作用機序、標的(作用部位)の特性、使用したモデル動物の妥当性について、ヒトへの安全性予測を困難にさせるような情報が得られている場合、あるいは十分な情報が欠如している場合には、ヒト初回投与時におけるリスクが増大する。
例えば、標的分子が多様な生物学的活性を惹起する場合や、生体内で広範に発現している場合、生理学的フィードバック機構では十分に制御できない懸念のある生物学的カスケードやサイトカイン放出(例えば、CD3またはCD28に対するスーパーアゴニストなど)が該当する。

 

推定最小薬理作用量

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2006年に英国で起きたTeGenero,CD28スーパーアゴニスト抗体TG1412の事故では、初回投与量をアカゲザル無毒性量の1/500に設定して試験を開始したが、実薬投与6例にサイトカイン放出症候群(サイトカインストーム)が投与直後に発症し、6人全員が集中治療室に運ばれる事態となった。
サイトカイン放出症候群は、抗体医薬などの薬剤の投与中またはその直後に、血中炎症性サイトカインの放出によって引き起こされ、悪寒、悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、高血圧などの種々の症状を呈し、重篤な場合はサイトカインストームに至る

この事故を契機に、ファースト・イン・ヒューマン試験のリスク軽減策が検討され、2007年に欧州医薬品庁からガイダンスが出され、日本においても2012年4月に「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」が発出された。
そのなかで、推定最小薬理作用量(MABEL:MinimumAnticipatedBiologicalEffectLevel)という概念が提唱された。
これはヒトでの用量反応曲線の立ち上がりの予想用量または濃度を表す。

 

MABELをベースに初回投与量を算出

従来、ファースト・イン・ヒューマン試験の初回投与量は、毒性試験の最大無毒性量に基づき安全係数を考慮して算出されているが、ガイダンスでは、作用機序、標的(作用部位)の特性、モデル動物の妥当性に関し、被験物質のリスク要因を特定し、その要因に応じて毒性試験からの外挿だけでなくMABELをベースに初回投与量を算出し、いずれかの低い用量を初回投与量とする方法が推奨されている。

投与量の設定に加え、前述のリスク要因に応じて、発現可能性のある有害事象/副作用を監視・管理するためのリスク管理方法、臨床試験を変更または中止する手順およびこれらを決定する責任者を事前に試験実施計画書に組み込むことが必要である。

また、リスクの高い被験薬の場合、全例を同日に投与するのではなく、初めにプラセボを含む少数例(例えば実薬、プラセボ各1例)で試験を開始することも、リスク管理の観点で有効である。

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