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定量的構造活性相関の長所と短所~定量的構造活性相関のパラメーターと、薬理活性に及ぼす効果2

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ドネペジルの場合

一例として日本発のブロックバスターといわれるアルツハイマー病治療薬の塩酸ドネペジル(以下ドネペジル、商品名:アリセプト)について見てみる。

ドネペジルは新規化学構造では世界で初めて承認されたアルツハイマー病の治療薬である。
アルツハイマー病の患者の死後の脳の研究から、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが異常に低下しているために記憶に障害が起きる、というコリン仮説に基づいて開発が進められていた。

研究の初めは、従来から知られていたアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるタクリンをシード化合物として取り上げた。しかしどの化合物も強い毒性作用を示したため、タクリンからの合成展開は中止した。
その時に高脂血症の治療薬の研究途中に偶然に発見されたのが、ドネペジルのリード化合物だった。

そこでこの化合物を4つの部分に分けて考えてみた。
一度に2つの部分を変えてしまうと、どちらの変更が薬理活性に影響したのが分からなくなるため、合成展開は1つの部分のみを変えることにする。ある程度の数を合成すると、どの部分にどんな部分構造を入れればよいか想定できるようになる。

その段階で各パラメーターの情報をコンピュータに覚えさせる。
各部分構造の分子のかさ高さ、電気陰性度、原子間距離、水素結合のしやすさなどである。
これらの情報を計算処理することで定量的構造活性相関が決定される。
相関係数が信頼に十分耐えるものなら、以後はその情報によるドラッグデザインを展開する。

この手法が成功する場合はきわめて短期間で、しかもきわめて少ない化合物の数の合成で最適化された最終化合物にたどりつくことができる。

定量的構造活性相関の長所と短所

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長所については今更述べるまでもないが、研究効率のアップがあげられる。

ではこの手の弱点は何であろうか。
いくら合成しても相関係数の値が信頼できるところまで上がらないことがある。

この場合は定量的構造活性相関のために合成しているような錯覚に陥ることがある。
この間の時間のロスは大きい。
メディシナル・ケミストがイライラしてくる時期でもある。

ここでコンピュータ・サイエンティストとメディシナル・ケミストの信頼関係が損なわれると、被害は拡大する。
つまり、コンピュータが計算して結果を出すより、自身のカンピュータに頼ってしまうのだ。
もう一つの弱点は、メディナル・ケミストの脳は薬理活性のないものはデザインすることはないが、コンピュータは薬理活性がない化合物の合成を要求する場合がある。

確かに構造活性相関を計算によって調べるには、すべての化合物に対し薬理活性があるものでは計算式を出すことができない。
大切なのは、定量的構造活性相関を利用してリード化合物の最適化を図る場合は、その手法の長所と短所をよく知ることに尽きる。

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