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誰の視点、立場で分析を行うのか~意思決定者のための薬剤経済分析2

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重要なのは視点と立場

薬剤経済分析を利用するに当たっては、まず、誰の視点、立場で分析を行うのかをしっかり認識しなければなりません。
そして、その視点、立場で何を費用とし何を効果とするのが適当かを判断していかなければなりません。

例えば、薬価の算定に薬剤経済分析を利用することを考えてみましょう。
この場合に説得する相手は、薬価を決める厚生労働省の保険局、あるいは中央社会保険医療協議会(中医協)ということになります。
つまり分析の立場は保険局、あるいは中医協ということです。

本来は保険の支払いを行う保険者の立場で考えるべきなのでしょうが、現在は保険局あるいは中医協が保険者を代表していると考えられるので、保険局ということにしておきます。
もっとも現在では条件付ながら保険者が直接医療機関と契約することが認められていますので、将来は個々の保険者の立場で考えなければならないということになるかもしれません。

保険局にとっての費用は保険から支払われる費用です。
つまり、薬剤費、薬剤の投与に必要な材料費、診察や入院に要する費用、薬の副作用に要する費用などについて考慮します。
もっとも現在の薬価算定方法では、診察や入院に要する費用は考慮されていません。

一方生産性の損失、つまり病気で休むことで失われる収入を持ち込んでも意味はありません。
医薬品の保管に要する費用や医薬品の取扱いにかかる人件費、あるいは交通費などの患者さんにかかる費用についても同様です。

なお、これらの費用を対照となる治療と比較するのですから、両者に共通する費用は実質的には考える必要がないともいえます。

現在の薬価算定方法

ところで、次のような問題はどう考えればよいでしょうか。

完全な治癒ではなくて延命効果が認められる薬は、それだけ費用がかさんでいく。効くか死ぬかというような薬が最も保険者にとっては経済的なのではないか

これは、その保険者の考え方によっては正しい議論です。
しかし保険者に分析資料を提供する場合は、一応保険者も一定の効果を期待している、言いかえれば安い費用で高い効果を得ることが保険者の意思であることを前提としましょう。

そこでその効果ですが、現在の薬価算定方法では、二重盲検比較試験など信頼性の高い臨床試験での治癒率、有効率、延命期間、副作用の発現率などで表されたものが評価の対象となっています。
患者のQOLの改善も当然考えられるのですが、現在はほとんど考慮されていません。
(もっとも、QOLを指標とした比較試験をほとんど行われていませんが)

また、これらの効果は薬剤経済学では、臨床試験成績を基に実際の医療の場での効果に外挿する必要があるのですが、薬価算定ではそこまでは要求していません。

次に、費用対効果を比較対照する治療法についてですが、薬剤経済学的立場から言えば、この対照となる治療法は標準的な治療法ということで薬物療法には限定されないのですが、現在の薬価算定方法では薬理作用、効能効果、構造からみて、最も類似の薬価基準収載品とされています。

保険局の動向

このように、薬価算定に薬剤経済学分析を利用する場合、現在の保険局の考え方に沿って費用や効果、あるいは対照となる治療法を選ぶというのが正しいのかもしれません。

ですが、このような費用や効果の選定は薬価算定方法の違いから生じています。

なので保険局は、薬剤経済分析を考慮しようということであるならば、薬剤経済学の立場で費用や効果、あるいは対照の治療法を選ぶよう説得することもある程度は可能なのではないかと思います。

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