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正確な費用や効果あるいは確率を求める~薬剤経済分析法1

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正確な費用や効果あるいは確率を求めることは難しい

薬剤経済分析は、「分析する視点を定め、視点に沿った費用と効果を特定し、対照となる治療法を選び、それぞれの治療の流れをデシジョンツリーやマルコフモデルでモデル化し、関連する費用や効果あるいは確率を求め、適切な測定法を用いて費用対効果を測定し、測定しようとしている治療法を比較する」という、一連の作業を行えばよいことが分かりました。

この流れの中で何が難しいかといえば、正確な費用や効果、あるいは確率を求めることになります。

例えば臨床効果について言えば、無作為化比較試験が最も信頼のおける試験と考えられますが、比較対照とする治療法との間で直接比較した臨床試験成績があることはまれです。
QOLについてもその測定法が様々ありますが、信頼性にはまだ議論があります。

生産性にかかる費用の計算や家族の看護を金銭に換算するときには、平均賃金などが利用されますが、そうすると老人や女性だと低くなるけれどもそれでよいのかという問題もあります。

実際の医療を前提とした分析でなければならない

一方で、薬剤経済分析が意思決定者への判断材料の提供という以上、実際の医療を前提とした分析でなければなりません。

臨床試験では、小児や高齢者や妊婦、合併症のある患者や併用薬のある患者、あるいは腎機能、肝機能の悪い患者は除かれるなど、実際の医療とは様相が異なります。
また頻繁に診察や検査が行われるなど、治療途中の医療の関わり方にしても実際の医療とはかなり違っています。

薬剤治療に関していえば、服薬コンプライアンスの問題も実際の医療では生じてくることでしょう。
したがって信頼の高い臨床試験があったとしても、その成績を実際の医療にシミュレートするところでかなりの論争になるでしょう。

費用についていえば、薬価や診療報酬のように公定されているものや市場価格のあるものはそれらを用いればよいのですが、そうでないものも多くあります。

例えば、治療にかかわる医師や看護師の人件費や、治療に用いる機器の費用をどう設定するかは頭の痛いところです。
あるいは、ある治療法では従来の治療法よりも副作用を軽減させることはでき、副作用にともなう費用を節約できたと主張する場合、副作用に伴う費用を計算するのは容易ではありません。

意思決定者のための判断材料の提供であるということを忘れてはならない

薬剤経済分析を実施するために改めて臨床試験を組んだり、大規模な調査を行ったりすることは現実的ではありません。
結局手に入るだけの資料を基に、かなり大胆に仮定や前提を置いてシミュレートするほかはないということになります。

もし、一医療機関での責任者やスタッフを意思決定者として行う分析ならば、むしろ、その病院のカルテやレセプトをレトロスペクティブに調査をして、その医療機関での治療成績や費用を用いる方が説得力があるかもしれません。

このように鍵となる数値を求める手法に様々な議論があるということは、薬剤経済分析結果を示して意思決定者の納得を得るためには相当な努力が必要ということを示しています。

薬剤経済分析は、決して独りよがりにならずに、意思決定者のための判断材料の提供であるということを忘れずに論文の評価や分析を行うことが最も重要なのです。

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