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患者の立場からの薬剤経済分析~薬剤経済学 分析の視点を踏まえる5

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患者の立場からの費用

病院で薬剤経済分析を説明する最後として、患者の立場で考えてみましょう。

費用のうちの医療費は、保険医療の場合は患者の一部負担金になります。もし差額ベッド代のように保険外の支払いがあればそれも加えます。
その他、医者にかかるための交通費や患者の世話をする人に支払う費用など、これまでは取り上げられなかったものも費用に含めます。

そのほかにも費用は生じるかもしれませんが、薬剤の種類によって差があるとは考えにくいので、増分費用で考えるかどうかに関わらず多くの場合、他の費用を考慮する必要はないでしょう。

ある文献では、医者にかかったり入院している間は通勤の費用がかからないということで、それを便益(効果)の方に加えているものがありました。

家族が世話をする場合の費用

家族が世話をする場合はどうでしょうか。

具体的には費用は生じません。薬剤経済学の教科書的な分析では、家族であろうが人を雇おうが区別はしません。
しかし、患者を意思決定者とするという出発点に戻って考えれば、患者がどう考えるかということになるでしょう。

例えば奥さんがパートを休んで患者に付き添う場合、パート収入がなくなるのであれば、患者はこれを費用として算定することに反対しないでしょう。

そうでない場合でも奥さんが付き添うことで家族などにしわ寄せがきて、実際に収入がどうということではないけれども、そのしわ寄せを金銭で表したほうが分かりやすいと考えるのであれば、費用とすることに抵抗はないかもしれません。

休業の場合の費用

これと同様に、患者の休業の問題があります。生産性の喪失などとよばれるものです。
休業することで得られるはずの収入を失うので、これを費用とする考え方です。医療費などを直接費用とよぶのに対して、間接費用と分類されます。

薬の効果で休業の期間が短くなれば、逆に収入が増えることになるので効果(便益)とみることもできます。
このように、同じものが見方によっては費用にも便益にも取れるときには、両方に含めることのないようにしなければなりません。

生産性の損失を考慮するのであれば、分析の対象とする患者の年齢や性別ぐらいは考慮することはあっても、基本的には区別せずに公表されている平均賃金などを用いて計算します。

薬剤経済分析は確率に基づくもの

効果については患者の期待する治癒や症状の改善ということになりますが、患者によって何を重視するかが違うので結構難しいかもしれません。
また慢性疾患の場合はQOLの改善が問題になるでしょうが、この場合も効用値は人によって違ってしまいます。

生産性の損失についても個人によって事情が違います。大企業に勤めている人ならば、少々休業しても収入は保証されるでしょう。
一方、個人商店の人ならば店を閉めることになるのでその間収入は途絶えてしまいます。そういう意味では既存の分析結果で患者に納得してもらうのはなかなか大変なのではないかと思われます。

教科書どおりの薬剤経済分析では、個人の都合は考えません。薬剤経済分析は確率に基づくものであり、必ずしも一人ひとりの患者に当てはまるとは限りません。
この点を患者に理解しておいてもらわないと、後でトラブルが起きるかもしれません。

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