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物理的な遺伝子導入法~遺伝子治療の原理、方法と手順、現状、および倫理的問題点2

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物理的な遺伝子導入法

ベクターを用いない物理的な遺伝子導入法も開発されている。
ハイドロダイナミクス法、エレクトロポレーション法、無針注射法がある。
さらに、物理的な方法とベクターを組み合わせた導入法も開発されている。

遺伝子治療の現状

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遺伝子治療は、まだ試験的な段階(臨床研究)であり、医療のレベルに至っていない。
世界で最初の遺伝子治療臨床研究は、アメリカで1989年にレトロウイルスを用いたアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対して行われた。
我が国でも1995年に北海道大学においてADA欠損症に対する遺伝子治療臨床研究が行われた。
最近では、非ウイルスベクターによる臨床試験も行われている。
しかし、臨床試験における事故や副作用が報告されており、より安全で遺伝子導入率の高いベクターの開発が求められている。

現在、最も多くの臨床試験が行われているのががんに対する遺伝子治療である。
がんの場合、欠損している遺伝子を補完するよりも、がん細胞を死滅させるタンパク質の遺伝子を送り込むことでがん治療を目指すものであり、前述の遺伝子治療とは少々異なる。
がんの遺伝子治療に用いられる遺伝子として、抗ウイルス剤と組み合わせる自殺遺伝子や、免疫関連遺伝子、がん抑制遺伝子、腫瘍血管抑制遺伝子などがある。
がん治療以外では、循環器疾患や単一遺伝子病に対する遺伝子治療臨床研究が多くなされている。

最近、遺伝子補充法よりも、siRNAやアンチセンスオリゴDNAなどを用いた遺伝子抑制法が注目されている。
遺伝子導入は、標的細胞の核内まで治療用遺伝子を送達する必要があり、障壁(細胞膜・核膜)が多い上に、ゲノムに組み込まれることによる危険性が心配されるが、siRNAなどは核外の細胞質でmRNAと結合すればよいため、より現実的な治療戦略として、アメリカの大手製薬企業を中心に世界中で盛んに臨床応用研究が展開されている。

遺伝子治療における倫理的問題点

遺伝子治療において注意しなければならないのは、患者の遺伝子情報の取扱いである。
疾患発症に関連する遺伝子変異が見つかった場合、その情報によって患者の就職・結婚や医療保険加入などが制限されたり、社会において差別される可能性がある。

この遺伝情報は、個人だけでなく血縁者にまで関わるものである。
遺伝子診断の進んでいるアメリカでは社会問題になっており、2008年に「遺伝情報差別禁止法」が成立している。

我が国でも、遺伝情報は「個人情報保護法」の対象であり、文部科学省・厚生労働省・経済産業省などによって遺伝情報に関わる研究・診療・産業に関するガイドラインが制定されている。
遺伝子情報とこれによる差別は、医療倫理の問題であり、医療従事者は患者の遺伝子情報の管理と機密保持に細心の注意を払わなければならない。

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